検診の考え方
歯科医療におけるメンテナンス(検診)をどのように考えたらいいのだろうか?
先日、東京大学医学付属病院22世紀医療センターで人間ドックの検診を受けたときに、担当医から受けた話が大変参考になると思ったのでご紹介したい。

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上のグラフは縦軸に病気の進行度、横軸に時間をとった場合の様々なタイプの疾患を示したものである。ある検査によって病気が見つかるには、ある程度病状が進む必要がある。その境界を判定限界とする。ここでは病気の進行がゆっくりの疾患Aから急速に進む疾患Cまで異なる3つの疾患を示した。
疾患Aは検診1と2の時点ではみつからず、3の時点でみつかる。疾患Bは検診2のときに見つけられるが、この時期をのがすと自覚症状が出現する。そのまま放置した場合、検診3の時点では治療不可能となってしまう。さらに急速に進行する疾患Cでは、検診1では疾患は存在せず、検診2のときにはすでに治療不可能な状態になってしまうため、これに対処するためには検診のインターバルをもっと短くする必要がある。
このように疾患のリスクに応じて、検診の時期は変える必要があり、たとえ検診時に疾患が見つからなかったとしても安心せずに、自覚症状が出た場合はすみやかに受診することが大切である。

 
定期検診がなぜ必要なのか?
私たちがいくら徹底的に感染源を除去したとしても、お口の中から細菌をなくすことは出来ません。この地球上から感染症をなくすことが出来ないと同じように、お口の中から虫歯や歯周病の原因菌をなくすことは出来ないのです。そのためプラークコントロールを毎日続けて頂くことが、重要ですが、私たちは人間ですから、毎日日記を書き続けるのと同様に、毎日きちんとプラークコントロールし続けることは非常に困難です。どうしても手抜きになったり、やってるつもりになったりしてしまいます。
また、私たちが入れたインレーやレジンの詰めもの、クラウンやブリッジの被せもの、義歯、インプラントは作り物です。車や建物と同じように経年的に劣化し、メンテナンスをしなければ、明らかに寿命は短くなります。

アクセルソンとリンデたちの30年間にわたるメンテナンスの結果を示す論文があります。
Axelsson P, Nyström B, Lindhe J.
The long-term effect of a plaque control program on tooth mortality, caries and periodontal disease in adults. Results after 30 years of maintenance.
 J Clin Periodontol. 2004 Sep;31(9):749-57.

この研究は、1971〜2年に来院した患者555名中375名をテスト群に、残りの180名コントロール群に分けて、0、3、6、15、30年後のお口の状態をチェックし、データーを採っている。
テスト群ははじめの2年間は2ヶ月に1回、その後は3〜12ヶ月に1回の来院頻度とし、来院ごとに歯科衛生士による染め出しと、PMTC(機械的歯面研磨)およびフッ素塗布を行っている。
1971〜1972年のメンテナンス開始時の年齢によって、次の3つのグループに分けて、定期的にメンテナンスを行った人が30年間の間に失った歯の平均本数をみてみると、次のようになる。
  • 20〜35歳  0.4本(50〜65歳時までの間)
  • 36〜50歳  0.7本(66〜80歳時までの間)
  • 51〜65歳  1.8本(81〜95歳時までの間) 

この数字がいかに驚異的な数字であるかは、平成17年に厚生労働省が発表した日本の年齢別の失った歯の平均本数と比較してみるとよくわかる。

  • 50〜54歳  3.7本
  • 55〜59歳  5.0本
  • 60〜64歳  7.1本

アクセルソンたちのコントロール群は残念ながら6年後までのデーターしかないので、テスト群との比較はできないが、6年後でテスト群0.2本に対し、コントロール群は0.7本であった。
歯を失った原因の多くは歯根破折であり、歯周病や虫歯によるものは、わずか21歯であった。

アクセルソンたちの研究から、50〜65歳で20本以上自分の歯が残っている人の割合は、95%以上であり、20〜35歳からメンテナンスを30年間続けた場合、95%以上の人が20本以上自分の歯を残すことに成功しています。

また、30年間の間に新たに発生した虫歯の平均本数は、

  • 20〜35歳  1.2本 
  • 36〜50歳  1.7本 
  • 51〜65歳  2.1本 

このうちの約80%は、以前に虫歯治療を行った部位の2次的な虫歯でした。
このことは、メンテナンスを続ければ、新たな虫歯の発生もほとんどないということを示しています。

このように、メンテナンスを継続していくことは、失う歯の数を減らし、歯の健康状態を維持するために大きな効果をもたらします。とかじ歯科では、ひとりひとりの患者さんのメンテナンスチャートを作成し、リスクに応じた間隔でメンテナンスを行っています。(長期メンテナンス経過症例はこちら
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