気がつくと、歯をかみ合せていませんか?
歯が悪くなるのは、虫歯や歯周病だけが原因ではありません。最近になって歯にかかる異常な咬合力も歯を悪くする原因になっていることがわかってきました。
あなたが物事に熱中していたり、仕事をしている時、考え事をしている時など、気がつくと上下の歯をかみ合せていませんか?
もともと歯は食物を咬むためにあるものですから、どうしてそれが良くないの?と思われるかもしれません。歯もひとつの構造物です。力がかかれば応力が生じますし、それが日常的に長時間起こっていれば、だんだんとひずみが溜まり、限界を超えれば最後には破折という破壊が起こります。かみしめの頻度と持続時間、力の大きさが生理的な許容範囲を超えてくると、問題が起きてきます。
ある研究データによると、人が1日のうち上下の歯を接触させる時間の合計は、食事の時間を入れても、わずか17.5分だということです。通常ほとんどの時間は、上下の歯の間は1-2mmのスペースがあって接触しておらず、私たち歯科医の間ではこのスペースを「安静空隙」、そのときの下顎の位置を「下顎安静位」と呼んでいます。これは咬むときに使う咀嚼筋の緊張が無く、リラックスしている時にとられる下顎の位置になります。
普段から歯を接触させている人は、咀嚼筋の緊張が強く、普段から「くいしばり」や「歯ぎしり」をしていることを示すものです。もし、そうであれば、歯に異常な力がかかっているため、様々な弊害が現れてきます。クインテッセンス出版のnicoいう雑誌にわかりやすい絵が出ていましたので、引用して説明したいと思います。

IMG_4336.jpg1)歯の摩耗
かみしめ、歯ぎしりによって歯のエナメル質が摩耗して、中の象牙質が露出して、咬んだときに痛みが出たり、しみたりします。摩耗すると広い面積で歯が接触するようになるので、より障害性の高い力がかかるようになります。(図はクリックすると拡大表示されます。)
IMG_4337.jpg2)くさび状欠損の出現
歯にかかる力の応力は、歯と歯ぐきのさかいめ付近に集中して現れ、歯の根元のエナメル質が破壊されて、くさび状にえぐれてきます。
この場所は神経に近いため、知覚過敏の症状が出たり、進行すると歯髄炎を引き起こしたりします。
IMG_4338.jpg3)歯槽骨の破壊
歯肉炎や歯周炎などの歯周疾患がある場合は、歯頚部付近にかかる応力は、歯槽骨の破壊を助長します。歯を揺さぶるような力がかかるために、歯周ポケット内に細菌が侵入しやすくなります。歯周治療の際には、咬合の安定化が必要となります。
IMG_4339.jpg4)補綴物の脱落・破損
力がかかったときに物体はひずみますが、その変形度は材質によって異なります。エナメル質と金属の間のひずみ率が異なるため、繰り返しの力は介在しているセメントを破壊し、補綴物の脱離が生じます。セラミックが欠けることもあります。
5)歯冠破折・歯根破折
異常な咬合力の最も深刻な被害は歯の破折です。多くの場合、破折は歯の喪失を意味します。特に根が割れてしまった場合は、その歯を救うことはまずできません。異常な咬合力は、時に天然歯をも破壊してしまいます。
C.I.2008.01.08_A004.jpg以上見てきたように、力は様々な問題を引き起こします。普段歯の接触時間が多い人は、咬んでいることに気がついたら、できるだけ上下の歯の間に空隙を作るよう顎の筋肉の力を抜くことを心がけてください。そうすると夜間寝ているときも、くいしばったり歯ぎしりをする時間が減ることがわかっています。
C.I.2008.01.08_A005.jpg朝起きたときに、顎の筋肉がくたびれていたり、かみしめていたときは歯医者さんに相談して、夜寝るときにつけるマウスピースを作ってもらうとよいでしょう。しかし、最も効果的なのは普段からかみ合せないように顎の筋肉をリラックスするように心がけることです。