歯根破折を防ぐファイバーコアポスト
20070827144122.JPG歯を失う原因のひとつに歯根破折があります。
これは非常にやっかいな疾患で、歯根破折をおこしてしまうと、抜歯か、破折部分を接着する一時的な対症療法、もしくは経過観察以外に治療方法がありません。
ゆえに歯根破折をいかに防ぐかということが、我々歯科医にとっても大きな問題となっていました。
通常、歯根破折は、生活歯よりも圧倒的に失活歯に多く、その比率は約10:1となっています。その理由として、これまでの研究から2つの事が明らかになりました。

一つは、「失活歯は生活歯の2.5倍以上の力が加わらないとそれを知覚できない」ということです。この事は生活歯よりも失活歯には強い咬合力の負荷がかかることを意味し、特に咬合力の強い男性や、歯ぎしり・くいしばりなどの咀嚼筋機能異常のある患者さんの場合に大きな問題となります。歯根破折の既往があり、歯ぎしり・くいしばりなどの咀嚼筋機能異常のある患者さんの場合はスプリントを夜間装着してもらう方が安全です。

20080225213338.jpgもう一つの理由としては、失活歯の場合は歯冠が崩壊していることが多いため、コアと呼ばれる土台を入れることになりますが(左図)、これが歯根破折の原因になっていることがあげられます。すなわち、強度の問題からコアは金属で作られることが多いのですが、歯質に比べて金属はきわめて硬いため、咬合力が加わったときに、コア材がくさびの役目を果たし、歯根の破折を引き起こすのです。

20080225213828.jpgこれを防止するために、金属にかわるコア材として開発されたのが、グラスファイバーから作られたファイバーコアポストです。ファイバーコアポストの弾性係数は、従来の金属製ポストに比べ象牙質に近似しており、歯のたわみに応じて屈曲しながら応力を分散するため、歯への負担を大幅に軽減するものとなっています。
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ファイバーコアポストの弾性係数は金属製ポストやジルコニアポストに比べてはるかに象牙質に近似しています。歯牙に応力が加わった場合、ファイバーコアポストは歯のたわみと同様に屈曲し応力開放を助けます。

データ提供:Dr. John M. Powers

このほかにもファイバーコアポストの利点としては、再度根管治療が必要になった場合でも、メタルコアに比べて、はるかに除去が容易であることがあげられます。このようなことから、現在私たちの歯科医院ではメタルコアの代わりにファイバーコアポストをコア材として使用しています。

 
セラミックの歯(メタルボンド)の型取り
健康なお口を維持するためには、患者さんご自身によるプラークコントロールが欠かせない わけですが、そのためには、私たち歯科医療者がお手入れのきちんと出来る補綴物を作ることが、非常に大切です。ですから、私たちは補綴物の寿命を左右する 一番重要な因子は、適合(どれだけ削った歯にぴったり合った物がはいっているか)だと考えています。そのためには精度の高い技工(歯を作る作業)はもちろ んですが、その前に精度の高い印象(型どり)が必要となります。
歯を作るには型を取って石膏模型を起こし、その上で作っていきますが、実物では歯と歯茎は区別できますが、模型になるとすべて石膏になってしまうため、境目がわからなくなってしまいます。

そのため、憶測で作ることになってしまい、最終的にできあがった補綴物は合わない物ができてしまいます。
そのような補綴物では、ブラッシングしてもきれいにプラークを落とすことが出来ず、フロスもひっかかって出来ないため、継ぎ目のところから虫歯が出来てしまいます。

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私たちが型を取るときは、まずはじめに歯のまわりにある溝に細い糸を巻きます。次にもう少し太い糸を上から巻いてしばらく時間をおきます。すると歯茎が歯から離れた状態になります。この操作を圧排といいます。

型を取る直前に、太い糸だけをはずします。

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シリコンという、より精度の高い印象材を用いて溝のなかまできっちりと型を取ります。

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咬合器という装置に模型をとりつけて、顎の動きを再現しながら、その動きに調和した形になるように、歯を作ってゆきますので、作るのが1本の歯であってもお口全体の型をとります。

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採れた型は顕微鏡で完全に取れているかチェックをします。
出血や気泡で採れていないときは再度糸を巻いて、歯肉を分離させ取り直しをします。

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型が取れたら、かみ合わせを採ります。

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最後に今回作る歯の色を決めて終わりになります。

20070301220532.JPG次 回出来上がるまでは、2−3週間ほどのお時間をいただきますが、その間はプラスチックの仮の歯を入れておきます。これは単に削った歯を守るだけでなく、歯 の位置がずれたりしないように保つ役目も持っています。もしも仮歯が壊れたり、はずれてしまった時はそのままにせず、すぐにご連絡下さい。

使用金属については、こちらをご覧ください。

 
補綴物の製作
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印象から製作用の模型を2つおこします。ひとつはダイ模型とよばれるもの(上写真左) で、この上で歯を作る作業をしていきます。もうひとつは歯列模型(上写真中)で、こちらは咬合器(上写真左)というあごの動きを再現できる機会に装着して、 かみ合わせの面を作るときに使用します。

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歯列模型上でワックスで最終的な歯の形を作ります。(上写真左)このときに咬合器であごの動きを再現させてみて、もしも動きを妨げるような干渉部分があれ ば、それを取り除き、あごの動きに調和した状態になるように形態を修正します。形が決まったら、シリコンで型を取りその形態を記録して、その後セラミック を盛る厚み分だけワックスを削除して、コアとなる金属部分の形を作ります。(上写真中)こうして出来たワックスパターンから埋没材を用いて、鋳型を作り、 そこに溶かした金属を流し込んでメタルフレームと呼ばれるもの作ります。(上写真左)

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こうして作られたメタルフレームの上にポーセレンといわれる様々な種類のセラミックの粉を盛り上げて、先に記録を取ったシリコンの型を参考にしながら窯で 焼き上げます。このとき難しいのは、焼くとセラミックは収縮するので、やや大きめに作る必要があり、経験が必要な作業となります。歯の色は、印象時に実際 の歯の色とあわせたシェードガイドの番号によって使うポーセレンパウダーの種類が決められていて、それに従ってパウダーを選択して作ります。すべての製作 過程において、適合状態は20倍の顕微鏡でチェックし、修正しながら作られていきます。こうして作られた歯はお口の中にいれたときにきわめて高い精度で適 合し、フロスをしても引っかからないお手入れのしやすい物が入ります。

 
ブリッジの連結・鑞着作業について
歯が抜けて無い部分や、歯周病により連結固定が必要な場合は、被せもののクラウンを連結固定する必要があります。この作業を鑞着(ろうちゃく)と言います。
連結した歯を作る場合には、前もってワンピースでつながった歯を作る方法もありますが、印象の精度の問題から、連結が長くなるほどクラウンの適合精度が悪くなります。
私のところでは、50ミクロン(0.05mm)の適合精度を目指していますので、1歯ずつ適合をチェック出来るようブリッジは連結をしないで製作し、口腔内で咬合状態や適合状態をチェック・調整した後に、直接お口の中でとなり同士のクラウンを樹脂で固定をして、鑞着作業にまわしています。1回来院回数は増えてしまうのですが、この方法の方が、より適合精度の良いブリッジが製作出来ます。
 20071217181909.jpg ラボから出来上がってきたメタルボンドブリッジ。この時点では、連結されていない。
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 同様に下顎のメタルボンドブリッジ。
PICT0706.jpg 1歯1歯バラバラに作られたメタルボンドクラウン。長く角のように伸びているノブは、歯の位置関係がずれないように、また固定作業がしやすいようにつけられている。
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 口腔内で適合と咬合状態をチェック・調整した後、パターンレジンという樹脂で固定する。
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  さらにその上から石膏で固定して、位置関係がずれないようにしてインデックス採得作業は終了。この状態でラボに送る。
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 ここからがラボでの作業。送られてきたインデックスのメタルボンド1本1本にダイ模型をもどして、口腔内の歯列の位置関係を再現した作業用模型を製作する。
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 固定していた石膏とパターンレジンを取り除き、作業模型にメタルボンドを移す。
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 鑞着作業のための耐火模型を製作するために再度インデックスコアをとる。
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耐火用埋没材に埋没。
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 出来上がった作業用耐火模型。鑞着部に鑞玉を配置してある。
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 金属鋳造や鑞着作業を行うファーネスとよばれる機械。ある程度まではコンピューター制御だが、技工士の経験と勘がものをいう。
 
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 鑞着作業終了。このあと研磨作業を行う。
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 作業模型に戻して、適合状態をチェック。
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 ラボから出来上がってきた鑞着されたメタルボンドブリッジ。これを口腔内にセットする。

 
全顎補綴治療例
66歳の女性。歯ぐきの違和感と出血を気にされて来院。メタルボンド、ゴールドクラウンなどにより、全顎にわたる補綴がなされている。

初診時口腔内(2002年8月28日)

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初診時レントゲン写真

歯周病の問題はないが、補綴物は全顎にわたって不適合で、プラークが蓄積し、それが原因となって歯肉出血と違和感を来していると思われる。根管治療の不良の歯や根尖病巣のある歯も認められる。
いくら良い材料の物であっても、プラークの蓄積してしまう不適合な補綴物では、病気を作るもとになってしまう。大事なのは、補綴物の材質ではなく、適合、機能的な形態、与えられている咬合関係といった補綴物の質である。

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バイトウイングによる臼歯部のレントゲン写真。不適合なクラウンが入っていることがわかる。
これでは患者さんはいくら時間をかけて磨いても、プラークを取り除くことは出来ない。

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治療終了時口腔内(2003年5月21日)

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治療終了時レントゲン写真

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以前の根管治療時には、ラバーダムを使用していなかったため、患者の希望により失活歯は再度根管治療を治療を行った。
左下は支台歯にかかる負担を考慮して、延長ブリッジではなく、インプラントにより補綴を行った。補綴物の適合が改善されたため、歯肉の状態は改善し、出血もなくなった。


 
コーヌス冠(二重冠)によるフルブリッジ補綴治療例
今回紹介するのは、非常にまれなケースである。当初は果たしてどれだけ維持できるのか、疑問であったが、それなりの結果が出てきたため、解決方法一つのとしてご紹介したい。

患者は50代の男性。1997年11月に前歯部の義歯のクラスプが脱落して来院された。
 
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上顎前歯欠損部の口腔粘膜は義歯の辺縁が食い込み、フラビーガム(こんにゃく状歯肉)となっていた。下顎大臼歯部が欠損しているため、前咬みになっていることが、フラビーガムと義歯破損の原因と思われた。
現在まで何度も義歯を作り替えたが、その度に壊れてしまう。自分は肉が大好物なのだが、義歯になってから、肉を食べようとすると義歯が壊れてしまうので、怖くてられなくなった。安心してステーキが食べられるような固定式の物になんとかできないのかと相談を受けた。
今でならインプラントという選択肢があるが、当時はまだ普及しはじめの頃であり、予後が不透明であったため選択しなかった。上顎の残存歯は右が5,6,7,番、左が1,2,3,7番であった。このうち右の6番は歯周病により骨がなく、左の1番はカリエスが進行しており、保存不可能と判断した。
患者の希望に応えられる補綴物を、残った残存歯でどのように実現したらいいのか悩んだ結果、残存歯の位置関係が四隅に近い状態にあることから、コーヌス(二重冠)タイプのフルブリッジにて補綴することにした。少なくなった残存歯をフルブリッジにて連結固定することで、強い咬合力から保護し、冠を2重にすることで、脱落してもカリエスなどの問題から守れる点、万が一残存歯が失われてもコーヌスタイプの義歯に移行できることから本設計に決定した。

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治療開始2年後、上顎に内冠をセットした状態とフルブリッジセット後の口腔内写真。下顎は5番の遠心移動を行い、右側はやや近心傾斜している8番を使ってテンポラリーブリッジを入れて、臼歯部の咬合面積を確保している。

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2002年、治療終了時の口腔内写真。久しぶりにビフテキを食べられたと喜んでおられた。

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2010年術後の口腔内写真。口腔清掃は上達し、良好である。この間、数回上顎のブリッジは脱離を繰り返しているが、残存歯は維持され、機能し続けている。

 
義歯による補綴治療例
56歳の女性。右上および左下のブリッジの歯ぐきがはれて痛むため来院。上下顎とも、義歯を支えていたブリッジがぐらぐらして、物がかめなくなった。歯周病が原因で歯がぐらぐらしていることは、知っていたが、歯周病に関しては何ら治療を受けていない。歯周病を治療せずに、義歯を入れると、どうなってしまうかを示すケースである。左上の犬歯は、かなり下方に挺出している。

初診時口腔内(2005年8月14日)

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初診時レントゲン写真

ブリッジの支台歯の注意には骨が無くなっている。下顎の1-2番の間にも垂直性の骨吸収が認められる。上顎犬歯と左下犬歯は不適切な根管治療を受けており、根尖病巣が認められる。

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初診時歯周検査

右上と右下臼歯部のポケットは10mmをこえており、ブリッジ全体が動揺している。赤はBOP(プロービング時の出血)を示す。下顎前歯以外は全て抜歯することとなった。

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補綴終了時口腔内(2006年4月13日)

下顎前歯は歯周治療後、メタルボンドブリッジにて一体化固定をはかり、局部床義歯の鈎歯とした。上顎は金属床の総義歯、下顎はRPIのキャストパーシャルデンチャーにて補綴を行った。

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補綴終了時レントゲン写真

右下犬歯は歯周ポケットからの感染により上行性歯髄炎をおこし、根管治療を行った。

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歯周治療前後の骨の変化

骨吸収の認められた右下2番はだいぶ改善してきている。

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ブリッジは歯をだめにするのか?
「ブリッジをすると歯がだめになるからしたくない。」という事を言われる患者さんがおられます。ブリッジは歯をだめにするから、インプラントが良いと勧める歯科医師の方もいらっしゃるようです。
ブリッジにすると歯の寿命が短くなるのでしょうか?私はそうは思いません。ブリッジもきちんとした治療行い、その後のメンテナンスをしていけば、長くもつと考えています。
私のところで開業して3年目に治療させていただいた患者さんが、先日お見えになりましたが、入れた当初の状態で1本も歯を失うことなく維持されています。

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平成5年6月 初診時のレントゲン写真

右上5番右下6番左上4,5番は残根状態、左下6番は欠損している。この当時はまだインプラントを導入しておらず、選択肢としてブリッジしかなかった。

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平成27年2月の口腔内写真。補綴治療後、実に20年経過しているが、全ての歯が良好な状態で維持されている。



 
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