斜めにはえた歯をおこす。
ある方から次のようなメール相談を受けました。
「13歳の息子の左下奥歯についての相談です。今年2月より、左下第6歯の歯茎が腫れ、痛みがあります。その都度かかりつけの歯科医より抗生剤と痛み止めが処方され、2・3日でおさまりますが、その間は食事がおもうようにできません。頬が腫れ顔の形が変わります。今回で3回目です。
原因は、第7歯が斜めに出できていて、第6歯に当たり出られず、押しているとのこと(レントゲン写真は確かに斜めでした。)
そこで、第6歯の神経治療後、1/3程度削り、第7歯が出たところでかぶせるとの治療法の説明を受けましたが、このまま放置しておいて上に出るかもしれないと医師は削りましょうと断言しません。それを決断するのは患者であると。そのためどうしたものかと悩んでいます。」

最近の子供さんたちは、歯が大きくなる傾向があり、スペースが足りなくなり、歯並びが悪くなる原因になっています。よく親知らずが斜めにはえて歯ぐきが腫れることがありますが、現代の子供たちは、親知らずではなく、第2大臼歯(12歳臼歯、7番)が斜めにはえてしまうのです。このような状態は虫歯や歯ぐきの化膿を引き起こすだけでなく、かみ合わせにも悪い影響を及ぼします。
私は、7番が引っかかっているからといって、第1大臼歯(6歳臼歯、6番)の神経をとったり、削ったりするのは反対です。そうしても、斜めにはえている7番がきちんとはえる可能性はほとんど無いと思います。私はそのような患者さんには矯正治療を勧めます。かなり斜めの歯でもちゃんと整直して、かみ合せを改善させることができます。ひとつ私のやった治療例を提示します。

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 右下の7番 右下の7番
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矯正治療開始直後 かなり起きてきた7番

 
矯正による咬合治療例
58歳の女性。奥歯がぐらぐらして、物がかめないため来院された。写真ではわかりづらいが、模型でみてみると、上顎の歯列は左右側方に広がり、下顎の歯と咬合していない。唯一咬合高径を維持している左の6、7番は咬合性外傷による歯周病と思われる骨の破壊がおこり、動揺を来して、咬めなくなっている。

初診時口腔内(1996年8月12日)

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初診時レントゲン写真

上下顎の両側7番には、咬合性外傷によると思われる骨の吸収が認められる。右上の1,2番間には咬合高径が失われたためにおきた前歯部の突き上げによると考えられる空隙が認められる。右上1番には根尖病巣も認められる。

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初診時歯周検査

ポケット3mm以下は記入していない。第2大臼歯部には6mmをこえる歯周ポケットが多数あり、分岐部病変も認められ、1〜3度の動揺を示している。*印はBOP(プロービング時の出血)を示す。
第2大臼歯を抜歯してしまうと、咬合部位が無くなってしまう。補綴治療により咬合関係を改善することは困難であると考えられたため、下顎の知歯の抜歯と、スケーリングによる感染のコントロールのみを行って、矯正治療にて、臼歯部の咬合関係を確立することにした。

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咬合回復のための矯正治療

咬合回復のための矯正治療として、上顎に急速拡大装置を逆に用いて、急速縮小装置として使用した。良好な咬合関係を確立するために必要な縮小量を計算し、あらかじめその分を拡大した状態で、装置を制作した。ネジを1回90度回転させると0.2mm縮小する。これを1日2回朝と晩に行ってもらった。


矯正開始時の口腔内写真(1997.1.16.)

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矯正終了時の口腔内写真(1997.4.4.)

臼歯部の咬合関係が得られた。咬合高径の確率により、右上1,2番の空隙も自然に閉じた。

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矯正治療後の歯周再評価検査結果

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第2大臼歯には依然として深いポケットが残っている。矯正治療により咬合関係が改善されたため、この時点で7番を抜歯することにした。



補綴治療


矯正治療および歯周治療終了時の口腔内写真(1997年7月31日)

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7番抜歯後のレントゲン写真(1997年8月28日)

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補綴治療開始時の再評価検査の結果

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右下6番の遠心に深い歯周ポケットが残っているが、7番を抜いてまだ間もないためであり、今後は改善していく物と考えられる。出血がまだ数カ所認められるため、プラークコントロールの強化を行う。これで歯周治療を終了し、いよいよ最終補綴にはいる。



補綴終了時口腔内(1998年5月20日)

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補綴終了時レントゲン写真(1998年6月6日)

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矯正治療により改善された臼歯部の咬合関係の変化

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治療終了時からまもなく10年が経過しようとしているが、その間3ヶ月に1度の定期的なメンテナンスを行い、現在まで咬合関係は良好な状態を保っており、歯周病の再発もなく、全ての残存歯は保存されている。

 
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