虫歯治療のコンセプト (その1)虫歯とは何か
虫歯というと、歯に黒く穴があいた状態を想像すると思いますが、ではどうやって穴が出来てくるのか、さらにはどこの時点で虫歯と呼ばれるものになるのかという点については良くわからないのではないでしょうか?

健康と病気の境目という物がはっきりしないのと同じで、虫歯か虫歯でないのかの境目もはっきりとした境目はありません。そもそも、虫歯というのはどういうものなのか、虫歯の定義を教科書なるものでひもといてみると、次のように書かれています。

う蝕(虫歯)とは、歯の表面に付着したプラーク内の細菌が、糖質を代謝・分解することにより、有機酸(乳酸・酢酸・蟻酸・プロピオン酸など)を産生し、歯質表面で常に起こっている脱灰と再石灰化のバランスが脱灰方向へと崩れることによって、歯質結晶が溶解して歯の構造が破壊されていく疾患である。

つまり、歯の表面においては、お口の中のPHの変動によって脱灰(Caなどのミネラル成分が唾液中に溶け出すこと)と再石灰化(溶けたミネラル成分が再結晶化すること)が常に繰り返し起きています。私たちが食べ物を食べると、口腔内の細菌によって酸が産生され、中性だったPHが徐々に低下し、PHが5.5以下になるとエナメル質の脱灰がはじまります。酸は唾液の緩衝能によって時間の経過ととも中和され、PHは中性に戻り、今度は再石灰化がおこります。

Ca10(PO4)6(OH)2 + 8 H+ ⇔ 10 Ca2+ + 6HPO42- + 2H2O
     石灰化             脱 灰         

下の図にあるように、間食時に糖分を多くとる習慣があると、脱灰の頻度が高まり、虫歯を作りやすくなることがわかります。
PH.jpg

また、歯の表面に付着したプラークの量がおおくなる場合も、プラーク中の細菌によって作られた大量の酸により、平衡状態がくずれて脱灰が進んでしまい、虫歯が発生します。

このように虫歯は、レントゲンでも判別できない初期の状態から肉眼でもはっきり識別できるような進んだ状態まで、さまざまな程度にカルシウムの脱灰が進んだ歯質の病巣であるといえます。

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初期のエナメル質の脱灰の様子を顕微鏡で調べてみると、ミネラルの消失は歯の表面からおこるのではなく、エナメル質表面には1層脱灰していない層があり、その下部のところで脱灰が起きていることがわかります。したがって1層残っているエナメル質はCaイオンの半透膜のような役目を果たしており、この膜が健全な初期の虫歯の状態においては、ホワイトスポットという状態で脱灰が認められます。この状態の場合は、再石灰化によって元に戻ることが期待できます。(数字は脱灰の程度を示す。)

20080218213022_1.jpg左の写真は矯正装置除去時の口腔内写真。
ブラケットの周囲にエナメル質の脱灰(ホワイトスポット)が生じている。(図6ー20)







矯正装置の除去により清掃が容易になったため、3ヶ月後には再石灰化がおきて、ホワイトスポットは消失してきている。(図6ー22)
このようにエナメル質の表層が破壊されていない初期虫歯は、再石灰化により健康な状態に戻りうることがわかっています。

それでは、次回は虫歯をどうやって診断し、どの時点で治療をするのか?についてお話ししていきたいと思います。