歯周病の臨床所見
1)健康な歯ぐき

健康な歯ぐきは、薄いピンク色をしていて、表面にスティプリングという非常に小さな凹みが点状に認められます。これは、歯ぐきの中にあるコラーゲン繊維の 付着部位を表しており、歯ぐきが健康で引き締まっていることを示しています。写真に描かれた黒い線の部分の断面を描いた物が、右下の図です。白いところが 歯のエナメル質、赤いところは歯ぐきの上皮組織、薄いピンクの部分が歯ぐきの結合組織部分で、赤い点は毛細血管を示しています。
歯と歯ぐきの境目には、溝(歯肉溝;ポケットとも言う)があり、健康な状態の歯ぐきでは、ポケットの深さは1〜3mmです。図に描かれた黒いマークは、ポケット底の位置を示しています。ポケット底から下の歯ぐきの上皮部分は、接着斑(ヘミデスモゾーム)と呼ばれる物でシールのように、歯のエナメル質にくっついています。このことによって細菌や異物が体内に侵入するのを防いでいます。
IMG_1596.jpgIMG_1597.jpg

2)歯肉炎

歯周病の初期の状態は、歯肉炎からはじまります。研究によると、適切なプラークコントロールをやめてから、3〜4日ほどで歯肉炎が認められるようになりま す。プラーク(ばい菌の集合体)のたまりやすいところの一つに歯と歯ぐきの境目があったことを思い出して下さい。(プラークの基礎知識を参照)プラークは 次第に量を増し、内部では嫌気性菌といって酸素の嫌いな菌が増えていきます。この嫌気性菌に歯周病原因菌は属しており、これらの細菌が歯周ポケットの内部 に入り込んでいくことで、歯肉炎が起きてきます。
ポケット内で増殖した歯周病菌から放出された細菌毒素は、歯ぐきに炎症反応という免疫反応をひきおこします。傷口からばい菌が入ったときのことを、思い出 して下さい。傷口の周囲が赤くなり、腫れて出血しやすい状態になります。これは免疫反応によるもので、これと同じ事が、歯ぐきにも起きてきます。下の写真 では、ピンク色だった歯ぐきは、赤くなり、歯ぐきがふくらんでいるのがわかります。断面図を見てみると、赤い点の毛細血管が増えて、歯ぐきの厚みが増して います。黄色い部分はプラーク(細菌)を表しています。免疫反応は主に血管内にいる、白血球やマクロファージと呼ばれる免疫細胞によって起こります。これ らの細胞が集まりやすいように、毛細血管が拡張し、今までところにも血液がたまり、結果として歯ぐきが赤く腫脹した状態になるのです。血がたまっているの で、出血しやすくなるのはそのためです。ポケット底の位置は健康だったとき(黒いマーク)よりも深くなって、ポケットの深さは4mm以上になります。
さらに長期間この状態が続くと、右下の写真に見られるような、黒い歯石が歯周病菌によって作られます。歯石はカルシウムでできているので、それ自体は有害 ではありませんが、歯周病菌の住み家となり、ここを足場にして歯周病菌はさらにポケットの奥へと組織を破壊しながら進入していきます。プラークによる歯肉 炎は、適切なプラークコントロールにより改善出来ますが、歯石がついてしまうと、歯石は歯ブラシでは取り除くことができないため、専門医による治療が必要 となります。
IMG_1591.jpgIMG_1594.jpg
IMG_1590.jpgIMG_1589.jpgIMG_1593.jpg


歯肉炎は歯周病菌以外に、ある主の薬(ヒダントインなどの抗てんかん薬など)によっても起きることが知られています。

歯肉炎の特徴
1)歯肉に限局した炎症で、ポケットは4〜5mm程度。
2)レントゲン所見では、骨の破壊が認められない。
3)通常20〜30歳代の若年者にみられる。

 IMG_1613.jpgIMG_1616.jpg 
 
IMG_1614.jpg
 
IMG_1617.jpg
若年者に一般的に見られる歯肉炎  歯肉腫脹の著しい歯肉炎

3)歯周炎

歯周炎の特徴
1)外見では歯肉炎が認められなくても、4mm以上のポケットが存在する。
2)レントゲン所見で、骨の破壊が認められる。
3)通常40歳代後半すぎの者にみられる。

歯肉に炎症が無くても、歯槽骨の破壊と4mm以上のポケットが存在があれば、歯周病と診断される。下の左側の写真は、一見歯肉炎にみえるが、レントゲンでは歯槽骨の破壊が始まっている。
歯周病がかなり進行すると、歯ぐきがやせてきて、歯が長く見えるようになる。歯槽骨の吸収により、歯はかむ力を支えることができなくなり、動揺や位置の変化を来し、前歯の間に隙間ができてくる。(写真右下)

 IMG_1619.jpgIMG_1622.jpg 
 
IMG_1620.jpg
 
IMG_1624.jpg
歯槽骨の破壊が見られる歯周炎  歯槽骨吸収の著しい歯周炎