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Photo by ミントBlue
私が小学校の4年生の時、同じクラスにK君というおとなしい子がいた。彼は口がきけない訳ではなかったが、何らかの理由で学校では一言もしゃべらず、いつも教室の隅に一人ぼっちでいた。例によっていじめっ子たちは彼を捕まえ、くすぐって声を上げさせようとしたが、彼は笑い声すらも上げなかった。 ある時、図工の授業で二人以上のグループを作って共同で一つの作品を作ることになった。私はK君といっしょに作品を作ることにした。K君とは会話ができないので、私が適当に質問をしてyesなら右手、noなら左手にタッチしてもらうことで何を作るかを相談した。学校の帰りにK君の家まで行き、k君の家で作品を作った。その時お母さんから、K君は家ではすごく良くしゃべるということを聞かされてびっくりした。しかし私がいると、自宅に帰ってもk君は相変わらずしゃべらなかった。数日かかって作品は無事に完成し、先生からほめられた。それから私はK君と時々遊ぶようになった。 しかしある日、私はK君と夕方に会う約束をしていたにもかかわらず、何かに夢中になっていて忘れてしまった。きっと長い時間約束の場所で待っていただろうK君に私は次の日学校で謝まった。K君は許してくれたが、私は妙な罪悪感を感じて、それ以来K君とは疎遠になり、その年の終わりにK君は転校してしまった。 あのときの妙な罪悪感が何だったのか、最近になってようやく気がついた。あのときの私はK君を友達として対等に見ていなかったのである。自分の中にかわいそうだからという同情の気持ちがあり、自分は良いことをしているんだという優越感にも似た感情があった。そういう気持ちでK君と接していた自分に私は罪悪感を感じたのである。 実は、これは今の私にとっての日常である、歯科医師と患者の関係に良く似ていると思う。ややもすると、医療者は病に困っている人たちを治してあげているという思いを持ち易い。K君との出来事を回想した事がきっかけで、私はこの事に気づくことになったのである。そして医療者が患者さんをひとりの人間として尊重することがどれほど難しい事か、改めて思い知らされた。日々の診療において、私は常にこの事を念頭に置いて、患者の思いを聴いていきたい。 by 医療法人社団 とかじ歯科
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