根管治療で残せる歯・残せない歯 〜抜歯をする前に〜

当医院には、根管治療がうまくいかなかったり、前医から抜歯を勧められて、なんとか抜かずにすまないかと悩んだ末にいらっしゃる患者さんが多くいます。
そのような方を拝見してみて感じたことは、根管治療時の感染のコントロールが不十分なことが原因で治っていないケースが結構あり、そのような場合は根管治療で残すことが出来ることがあるという事です。
もちろん破折が根の深部まで及んでいたり、虫歯が非常に深くまで進行している場合や根管治療以外の問題(歯周病の合併など)があって残せない場合もあります。他の医院で抜歯と言われても、残せるもしくは延命できる場合がありますので、抜歯してしまう前に一度ご相談いただければと思います。

<症例1> 36歳男性 
主訴:
右下奥歯の歯ぐきが腫れて痛む
経過:
ひと月前に親知らずの部分の歯ぐきが上の歯に当たるくらい腫れたので、当たる部分を電気メスで切除してもらった。その後も腫れがひかないため、別の医院で診てもらったら、炎症が親知らずから7番の根尖に広がっているので、抜いた方がいいと言われ口腔外科に紹介された。6番も根尖病変があり、根管治療を開始したが、根管が見つからないため今回一緒に抜いた方がいいと言われた。口腔外科の先生にも抜いた方がいいと言われたが、本当に抜く必要があるのか知りたい。
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初診時の口腔内
右下6は根管治療中で、7番には動揺、歯肉の腫脹と圧痛が認められた。

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初診時の右下のレントゲン写真

6番は誤った方向に根管が掘り進められ、パーフォレーション(穿孔)をおこしている。(矢印)
7番の遠心根根尖から8番にかけてレントゲン透過像(炎症による骨の破壊)が認められる。

8番の炎症が火種となって7番の根尖病巣に影響している可能性があり、8番だけ抜歯してもらうように、口腔外科の先生にはお願いした。抜歯後かなり腫れと痛みは軽減したが、7番の違和感が残ったため、ラバーダム下での根管治療を行った。6番も隔壁を作り、ラバーダム下で消毒を行った後に穿孔部をMTA(ProRoot)およびレジンにて閉鎖した。その後顕微鏡を用いて閉鎖根管を探し、時間をかけて違和感がとれるまで根管形成拡大を行った。根管治療に要した回数は7番は3回、6番は8回。

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根充後のレントゲン写真

根尖のレントゲン透過像は縮小傾向にあり、7番の動揺も無くなっている。

<症例2> 35歳女性 
主訴:
右下奥歯の歯ぐきが腫れている
経過:
前医で根管治療を受けたが、歯肉の腫れがおさまらず、抜歯した方がいいと言われた。内側の歯ぐきが腫れて膨らんでいる。前医では近心頬側根管付近に穿孔が認められたため、レジンセメントで封鎖しているが、炎症はおさまらなかった。CTを撮影したところ、かなり大きな骨透過像となっていたため、抜歯を勧められたが、残すことが出来ないかと思い来院した。
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初診時の口腔内写真

6番の舌側歯肉は腫脹しており、ろう孔(膿の出口)が形成されていた。

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初診時のレントゲン写真

根分岐部から遠心根尖部にかけてレントゲン透過像が認められる。

残根状態のため今までの根管治療ではラバーダムを使用しておらず、感染の除去が不完全であった可能性があり、歯冠部隔壁を作った後、ラバーダム下で根管治療を行った。

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穿孔部から病巣内に薬剤を注入したときのレントゲン像

穿孔部のレジンセメントを除去したところ、かなりの量の排膿が認められた。
水酸化カルシウムを貼薬し無菌化を計った後、病巣内にビタペックスを注入した。
その後根充材を除去して、再度根管清掃を行った。

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根管充填時のレントゲン像

歯ぐきの腫脹や違和感は無くなり、骨の透過像は縮小してきている。
根管治療に要した回数は5回。

このように隔壁とラバーダムにより根管治療時の感染のコントロールをしっかりと行い、顕微鏡で詳細に状態を観察することで、良くなるケースがかなりある。非常に根気と手間のかかる作業だが、治療成績はかなり向上する。

この2症例はいずれも穿孔を伴うケースであったが、穿孔部が今後の予後にどのような影響を与えるのかは未知数である。穿孔部に及ぶポケットが形成され、そこから再感染が起こることも十分考えられるし、穿孔部から破折が起こる可能性もある。それでも何年か歯を延命できるのであれば、根管治療の価値はあるのではないだろうか?
最後にもっとも予後が良いと考えられるケースをご紹介しようと思う。できるだけ根尖周囲への感染が少ない早い段階で根管治療をした方が、治癒も良いし、予後も安定しているように思える。

<症例3> 41歳女性 

主訴:
左下奥歯の歯ぐきが腫れている
経過:
半年前から左下奥歯の歯ぐきが腫れるようになった。昔矯正治療をして、その後虫歯を治療した。もう10年以上たっていると思う。
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初診時の口腔内写真

虫歯などは認められず、何らかの原因で歯髄が壊死して、根尖病変が出来たと思われる。

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初診時のレントゲン写真

根分岐部から遠心根にかけて大きな骨透過像が認められる。

感染が原因ではないので、ラバーダム下で感染させないように根管治療を行った。

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根管治療時と根管充填後のレントゲン写真

歯肉の腫脹や違和感は無くなっている。

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根充後1年経過時のレントゲン写真

透過像はほとんど消失し、骨が再生されている。
今回治療に要した回数は3回。
感染が無い病巣はここまで劇的に治癒する。
感染でこじれてしまうとここまできれいには治らない。

 
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